姫宮の口内を貪るように味わいながら、司の身体の奥では熱い塊りが脈打つように徐々に大きくなりつつあった。
そのままの状態をキープしながら重心を前にゆっくりと傾けて、姫宮にのしかかるような形でベッドに押し倒す。
「・・・・っ・・・んー・・・」
腕の自由がきかない姫宮は、身体を捩るようにしてなんとか逃れようとするが、足がじたばたと虚しく空を蹴るだけだった。
ただでさえ、細身とはいえ身長180近くのある大の男の身体を押しのけることは相当の力を必要とするというのに、両腕を背面から縛られ頭を押さえつけられたら、さすがの姫宮でもたまったものではない。
やがて諦めたのか、それともさすがに力を使い果たしたのか、姫宮は抵抗を止めて大人しくなった。
それを見計らって、漸く司は唇を解放してやった。
余程苦しかったのか、喘ぐように空気を求めて呼気を荒くする姫宮の顔は、赤く上気し、しかも涙目になって潤んでいる。
「―――な・・・っ・・・いったい・・・お前・・・っ!」
まだ呼吸が整っていないため、発する言葉は不明瞭だが、言いたいことは分かっている。
姫宮の上に乗ったまま、司は余裕の笑みを返した。
「まあまあ、お兄ちゃん。たかがキスじゃん」
「・・・たかが・・・って―――」
相当に濃厚なディープキスを、「たかがキス」扱いする司を前にして絶句している姫宮に、さらに絶望的な追い討ちをかけるように言った。
「どうしたの?こんなのはまだ前戯にも入ってないんだから、今からそんなに興奮しないでよ」
「―――ぜ・・・前戯って・・・・司・・・?」
瞠目する姫宮の瞳は、怒りから徐々に「まさか」という不安へ・・・そして、少しずつ怯えの色が混じり始めた。
「・・・もういい加減にしろよ、なあ・・・これ解いてくれ」
「いやだ。お兄ちゃん、すぐ殴るから」
「―――・・・ざけんなっ!!てめっ・・・あとで覚えてろよっ!!」
「怖いなぁ、お兄ちゃんでもそういう言葉言うんだね?」
「・・・お兄ちゃん言うな!!お前なんか―――・・・・」
「俺なんか・・・なに?」
司は姫宮に自分がボコボコにされる所を想像し、苦笑した。
たとえ後々姫宮に殺されても、今これからやろうとする事を止めるつもりは毛頭ない。
「姫宮が言ったんだぜ。俺たちが異母兄弟だって・・・。血が繋がってるんだからさ、お兄ちゃんはお兄ちゃんじゃないか。それとも、シンプルに兄さん、がイイ?・・・・うーん、いっそ兄貴とか?ダメ?・・・じゃあ、お兄様は?」
「・・・司・・・頼むから―――・・・」
ふざけた軽口を並べる司を相手にする気にもなれないのだろう。
姫宮は疲れたように眉根を寄せ、目を伏せた。
「腕が、痛い・・・・解いてくれ」
微かに震える繊細な長い睫毛が、上気した頬に薄い影を落とす。
司は真上から見下ろすような形で食い入るようにその顔を見つめている。
―――どうして姫宮には分からないのだろう・・・。そういう顔をすればするほど俺をその気にさせてしまうということが・・・
「顔が赤いよ、お兄様。暴れたから暑いの?この部屋けっこう暖房きいてるからね。」
そう言うと、司は姫宮の着ているコーデュロイのシャツのボタンをはずしにかかった。
姫宮は慌てたように再び暴れだした。
とはいえ、腰のあたりにどっしりと司が乗っかって居る為、姫宮の必死の抵抗も肩を左右に少し捻るのが精一杯で、ほとんど効果はない。
「・・・こら!やめろってば!!なにやってんだよっ・・・!」
「だって、暑いだろ?涼しくしてあげようと思ってさ。兄想いの弟としては・・・。ちょっと、お兄様おとなしくしてくれよ。そんなに暴れたら、もっと暑くなっちゃうってば」
喋りながら手際よくボタンをはずし終えると、姫宮の白い下着をいっきに捲り上げた。
「―――すげ・・・」
司は思わず目を見張った。
「・・・・よせってば!!」
姫宮が馬乗りになった司の下でもがいた。
司はその肩を押さえつけて、じっくりと観賞する。
「お兄様、なに恥ずかしがってるの?男の子同士でしょ」
白く滑らかな肌、その皮膚の下にはまさに理想的に発達した筋肉があった。
服を着ていた時には分からなかったが、そこには無駄な贅肉は一切無く、かといってマッチョ的な誇示する筋肉ではなく、ぎりぎりまで減量で絞られたボクサーのような、ストイックさすら感じさせる肉体があった。
しなやかな隆起の線を描く大胸筋、そしてくっきりと割れた美しい腹直筋―――
「・・・こんな綺麗な身体、俺初めて見た―――・・・」
司は感嘆の溜息を漏らした。
一見華奢にすら見えるほど痩身でありながら、あれほどの運動能力を発揮できるのは、よほど常人離れした良質の筋肉を持っているとしか思えなかったが、やはりこうして間近で見て、改めて深く納得するものがあった。
思わず嘗めるように見入っていた司は、ゆっくりと姫宮の胸に顔を近付けると、その肌に舌を這わせた。
「―――・・・あ・・ッ・・・・」
ピクリと身体を震わせて姫宮が反応した。
「お兄様、意外に感度イイんだね。それに・・・・すげー色っぽい声」
「・・・・・・」
司の言葉に羞恥心を刺激され、上気させた顔をさらに赤くした姫宮は、無意識に出てしまう声をこらえる為に唇を強く噛み締めた。
そういう所がさらに司の欲情に油を注ぐような結果になるのだが、そんなことを姫宮自身が知るわけも無い。
司は感じやすそうな姫宮の乳首を、吸ったり嘗めたり、軽く噛んだりして容赦なく責めたてた。
姫宮の我慢はすぐに限界を迎え、司にギブアップを訴える。
「・・・つッ・・・司・・・頼むから、もう・・・・」
「なぁに?お兄様、乳首だけでこんなに感じちゃうなんて、女の子みたいだね。・・・可愛い・・・・」
「―――・・・もう、やめ・・・」
哀願する声と、眉根を寄せて切なそうな姫宮の端麗な顔を見ているだけで、司はとてつもなく淫らな興奮が湧き上がってくるのを感じ、身体が震えた。
「・・・キスして、お兄様」
半開きの姫宮の唇に再びゆっくりと口づけて舌を絡ませる。
「・・・・ん・・・っ・・・」
一度目よりも、はるかに硬さのとれた感じの姫宮の反応に司は気を良くし、時間を掛けてさらに激しく口中を嘗め回した。
舌の粘膜と唾液が絡まって淫猥な音を響かせる―――。
口中から溢れ出た唾液が冷たく光りながら、姫宮の頬を流れ、滴り落ちていった・・・。
to be continued....